熊本地震で被災した建物や生活の応急・復旧支援活動を行っている方々の報告会と意見交換会を学校のよしやまち町家にて行っております。6月10日は前回の5月19日に引き続き、2回目。
第1回は地震後間もなく熊本入りした長谷川順一氏(建物修復支援ネットワーク、新潟)による緊急報、連休後に現地で観察した川端眞氏(木の家ネット構造設計、滋賀)による報告と意見交換を行いました。鈴木有先生と佐野の呼びかけに応じた26名が参加。
*震度7を2度経験するという過去に例のない地震に加えて、卓越周期が比較的長く、建物被害を大きくした
*突き上げの地震動が大きく、金物を伴った筋交いでも破損している
*火山灰土という軟弱な地質、地盤自体の変形が被害を大きくした
*温暖な土地ゆえに多くのシロアリ被害が認められる
*土蔵などの壁の被害が大きく、骨組みの被害の如何にかかわらず、諦められてしまった建物がある
*応急危険度判定及びその後の罹災証明のあり方に疑問がある
*ボランティア活動の混乱、マネージメントに問題が見られた
*屋根瓦がずれ落ちて雨漏り家屋が多い。生活の復旧のためにシートなどの応急措置を急ぐ必要がある
第2回は、長谷川順一氏による被災後の問題について、宮内寿和氏(木の家ネット大工)及び川端眞氏による現地建物の復旧活動の報告、田中嘉之氏(NPOまち・コミ、構造設計)及び堀田典孝氏(NPOまち・コミ、設計)によるボランティア活動の報告、意見交換を行いました。半分ほど入れ替わった26名が参加。
*直後に建築士は応急危険度判定をやるよりも、重要な仕事がある。柔軟な判断を
*大壁では危険度判定は難しい 倒壊の危険(赤)が30%ほどと、通常の地震のほぼ倍
*一部損壊でも屋根に雨漏り対策のシート養生を
*応急危険度判定で赤、黄となった建物に若者ボランティアは入れない。住人である老人が作業している
*仮設住宅の建設に応援の大工たちが追われ、建物修復のための応急作業に回れない
*多くの未指定文化財建物が中の歴史資料と共になくなってしまう
*中越、白馬での震災は降雪までにあまり間がなかったが、田舎ゆえの人のつながりで効率的な対応ができた
*行政などは大きな人の動きをつくること。意思決定を早く行うこと、個々の被災の声を聞いていてはダメ
*建築家などの専門家がテキパキと判断、説得力ある助言が有効
*仮設に向かうよりも、とりあえず住めるようになるまでの緊急支援を
*現地で対処する方法を見せるセミナーが有効
*モデルケースとして、マスコミにうまく繋げる
*地震でずれた石場建ての家の移動復元事例モデル
→ http://kino-ie.net/act_201.html (職人がつくる木の家ネットHPより)
*大きな酒蔵のずれた屋根瓦を大工たちで1日で復元、諦めかけた酒造を回復
*ボランティア活動は平時でも活動をして仲間の連帯感を養成する
*ボランティア活動団体同士の連携が重要
*ボランテイアに指示を出せる建築専門家が欲しい
*上で指示を出せるデザイナー養成が必要
その他の方々からの意見:
*熊本地震では火災がほとんどなく、助かった
*京都で大地震が起きた場合にどう動くか、地域ごとの人のつながり、的確な指示をどういう体勢で出すか、今からよく検討しなくてはならない(京都市建築安全推進課)
*建築的な「災害に強い家づくり」と同様に、「災害で直しやすい家づくり」という観点も重要だ。さらに、まち・コミの方が言われているような、人のつながりによる「災害に負けないまちづくり」を目指したい(さの)
*応急(3日)、復旧(3か月)、復興(3年)という時間スパンの整理で議論すべきだ(円満字)
1か月後にもう1回、第3回目の勉強会を行いたいので、よろしくお願い申し上げます。
(さの)