2年ウエジマです。よしやまちの作業場は寒い!!!です。今日は耐震格子建具をいよいよ1間半の町家の軸組に入れてどう耐震性を発揮できるか、実験しました。材は全て手持ちの材からかき集めて作りました。いつしか、こんなものも作れるようになったんだと、ちょっと感慨深いな、です。吊り束と鴨居との初めての送り蟻!案外、うまくできました。今日の実験には、実際にこの耐震建具を採用しようという島原のお施主さんもご覧に。緊張です。
片方は先日の実験済みのものです。スムーズに変形してます。写真は1/60rad変形時のもの。荷重は5.66kNです。
一番弱い鴨居がかなり曲がっています。欄間に合板をはめて、力を桁まで伝えています。合板がかなり頑張ってくれています。
実験は1/30radまで。次に斜め格子もやるので、そこそこで止めています。この時の耐力は9.53kNでした。1t弱です。
格子を替えるだけでなく、合板を留めているビスも抜けかかっているのを再度、押し込みんでいます。
さすがに斜め格子は強度がありますが、その分、他のあちこちに無理がかかって、悲鳴が。合板がずいぶん歪み、格子の枠もずれ、格子自体も面外座屈を始めています。1/30radあたりで耐力は2t近くまで上がっていますが、格子の一部が破断、合板の面外の座屈もかなりな状態に。1/20radまで行こうと思いましたが、危険を感じたので、途中でやめました。僕は油圧ジャッキを操作していましたが、怖かったです。個人的には、いくら強くても、斜め格子はアカんのではないかと。
さの:みなさん、お疲れ様でした。結果をグラフにしてみました。青が縦横格子A、オレンジが斜め格子Bです。この試験体ではそれぞれ2枚ずつ入ってますので、先日の個々の耐力のほぼ2倍の結果が得られるのではないかと予想していましたが、
特定変形角 1/150rad A 0.76 kN 2A 2.7
B 1.30 kN 2B 4.4
1/60rad A 1.47 kN 2A 5.6
B 3.1 kN 2B 10.4
1/30rad A 2.5 kN 2A 9.5
B 3.7 kN 2B 19.8
いずれの場合でも、耐力は3〜4倍となっています。これは前の実験ではなかった欄間小壁に補強として入れた合板の耐力によるものと考えられます。合板には、一部、欄間障子の入る切り欠きがあって、その分、耐力は減じていると思われますが、もしこの切り欠きがなければ、もっと耐力はアップすることでしょう。合板、恐るべしです。
実際に採用を考えている町家では、おおよそ、この3Pモデルが負担している建物の重量からすると、案外、土壁が少ない軽めの建物なので、Aの縦横格子で、1/60radほどの変形が稀な地震動に対応し、想定される最大級の地震動に際しては、1/30radないし1/20rad程度の変形が想定されるでしょうし、Bの斜め格子では、それぞれ1/100rad程度、1/60rad程度でカバーできそうな具合となります。もっとも、変形は建物全体で決まるものですので、これはあくまでもこの部分だけのことですが。
それほど頑丈でないしなやかな格子をうまく使えれば、軽い町家のデザインに合う軽い耐力要素として、こういう格子はもっと利用できるように思います。B斜め格子は、耐力は大きくていいのですが、やはり筋交いに似ていて、破壊しやすい、脆弱な性格を持っていますので、要注意かなと思いました。柔らかいけれども、粘り強い縦横格子を数多く、要所要所にうまくデザインするという方針で行くのがいいように思います。