町家改修演習風景 伝統建築研究科より  6月7日

先週の土曜日に現地調査を行った研究科生のみなさん、さっそくめいめいの町家改修案を持ち寄って意見交換会です。ここではTさんの案を紹介いたしましょう。

 Tさんの説明を伺いました

 Tさんの計画案。

「飲食店をイメージしています。階段を吹き抜けの通り庭に移動、その下にキッチンを設けます。」

--なるほど、こうすれば南半分に客席を並べられてすっきりしますね。2階はお住いの方しか上がらないので、お客さんはこの階段は登れませんが、下から眺めることはできますね。階段を透かしたら光も漏れていいのですが、キッチンに埃が落ちてしまいますので、不燃材で蓋をしなくてはなりません。キッチンの排気ダクトをうまく処理してやらねばなりませんが、可能だと思います。

「客室は板間にしてちょっと上げています」

--それは土間にするよりも、柱の下を結べるので耐震的には有利でいいと思います。

「庭を広く取りたいので、トイレは入り口土間側に持ってきました。客待ちスペースとなります」

--お店にこういうレイアウトがよくありますね。換気の問題がありますが、いい解決方法だと思います。店にこられたお客さんが見えにくいのが欠点となりますが、客席側に一人いれば、声もかけられます。

「耐震壁は先生の指示通りにはなっていませんが、合計の長さでは確保できると思います」

--そうですね。でも庭に近い⑩通りには耐震壁が欲しいです。

「カウンター側に入れたらいいかと」

--正面の①通りは軒下の壁なので、いくら耐震壁を持ち込んでも役に立ちません。一歩踏み込んだ②通りが二階の壁の位置で、そこに耐震壁が必要です。この案では客待ちスペースを分断してしまいますが、とても重要な耐震壁となります。

「格子などで透かした耐震要素を考えています」

--それはいいですね。格子の他にも、貫を多段に重ねるのもいいデザインです。通常、床面を固めて、耐震壁に力が流れるように設計しますが、伝統構法では基本的に軸組ごとに耐力を見ていきますので、水平構面はほどほどの剛性でよいようです。

「天井は抜いて、床梁を補ってデザインにしたい」

--賛成です。客席はこういう配置よりも、一人客が多いことを考慮して、壁に背を向けた2人向かい合って座る幅の狭いものをずらりと並べる方法が、4人に対応できて向いているように思います。

次回には、もう少し突っ込んだデザインの提案をお願いできると嬉しいですね。よろしくお願いいたします。Tさん、ありがとうございました。(さの)

SNSをフォローする