伝統建築研究科 設計発表会−1 9月5日

研究科専攻生による設計課題の発表会の様子を紹介しましょう。

まずはOmoriさん。大中小の3つのお茶室を設計されています。

これは天井伏図。左から、四方に縁を廻した書院風の広間、中ほどに水屋と2畳大目の小間、そして4畳半席。

屋根は柿葺き(こけらぶき)で、下屋もいろいろに取り付いてなかなかに複雑です。

土庇の構えが好みのようですね。室の内外の関わりが土庇によって複雑になり、空間の面白さが演出できそうです。

しかし構造と納まりがよく飲み込めていない部分のあることがちょっと残念で、また細部の見え方や寸法などがあやふやです。でも、これだけのボリュームがあると、屋根の変化がとても美しいですね。詳細や露地庭を視野に入れて、ここからもっと設計を進めていって欲しいと思いました。

次に、Taketani さん。茶室を含めた事務所と住まいを現在設計中とのことです。

とても綺麗なスケッチですね。造園設計をされているので、特に庭への思いが深いと見ました。敷地は伝統的な屋敷が散見される斜面にあり、擁壁で水平にされた既存の敷地をそのまま利用するそうです。

同じスケッチの一部を拡大した図です。右手に突き出し他部分が仕事場(事務所)で、玄関との間に茶室が設えられています。

これも2畳大目の茶室で、事務所の土間と一体になっているのは、阪急創始者の小林一三の即庵に倣ったものと。椅子に腰掛けてお茶を楽しんでもらえるようになっています。時に仕事の合間にこの畳に寝転がれるようにと。

桐:お茶席として用いる際には、茶道口の手前に座ってご挨拶するスペースが必要です。もうちょっとだけお茶室を下に下げられないか?

T :右手前にある大きな紅葉の根っこをこれ以上傷めたくないので、下げられないのです。

さ:今の設計の式台では狭いので、もう一つ台をその場合にだけ置くようにしたらいいのでは?

お客は通常、事務所にはどうアプローチするのかな?

T :お茶席のおりには濡れ縁が外腰掛けの設えになっていて、そこから庭に伝い、石橋を渡って土間に来ていただくのですが、通常の場合は、玄関から土間伝いに水屋を通って事務所に来てもらいます。

さ:水屋を見ながら来るのがどうかな。水屋を庭側に突き出してみては?

そうすれば、このスペースに半畳分の畳を置くかパタンと倒して据えて、そこから入室することもできるのでは?

僕だったら、お茶席を庭側に置いて、事務所を手前にする。やはりお茶席の方が奥の上位にあるべきかなと。

もう一つ、この家にはいろいろ楽しそうな空間がいっぱいあって、とても魅力的と思います。その中でも、冬場にはマキストーブの部屋は格別 で、おそらく、冬に来られたお客はここで打ち合わせをしたいんじゃないかな。

T :いろいろなご意見をありがとうございます。次回までにもう少し考えてみます。

桐:次回は9月19日に続きをしましょう。よろしく。

(さの)