伊賀上野の伝統民家調査 1月6−7日

伊賀上野の伝統民家を購入されたTさんからの相談を受けて、この冬休みに建築科1年生木工チームで現状調査に向かいました。伊賀上野へはおよそ70km、車で2時間ほどです。メンバーはリーダーのタニ、グッさん、タカギシ、タケウチ、シュンの5名+さの先生。翌日には伊賀上野にいる夜間生のオクタニさんが駆けつけてくれました。

 みんなで記念写真

大きな瓦葺き2階建ての家です。雰囲気のよい土塀と門に、鉤の手の物置、倉で構成されています。前のさの先生の下見では、物置にかなりのシロアリ被害があるので、まずはそれを僕たちで修繕しようということです。今回はそのための実測調査が主な仕事です。

   物置の床板をめくる

物置の中は割合片付いていて、ほとんど問題がなさそうに見えましたが、よくみると、シロアリの被害がわかります。

 シロアリでスカスカになっている床梁

二階の床梁は柱にほぞ差しです。スパンは約4m、6寸*3.5寸の松梁です。傷んでいる床梁は上に柱が載っているので、9寸*4寸でした。

 物置を外部から見る

シロアリは柱の根元から這い上がって梁まで食べています。外に回ってみると、軒樋のあるところになっていて、物置の2階屋根の雨水もここに集中しており、溢れた水が壁を濡らし続け、柱や壁の裾を腐らせたのが原因と見られます。写真でもわかるように、その辺りが下がっており、貼ってある板も裾が腐っていました。

 柱の根元をチェック

床板をめくりながら、柱を一本一本目で見るのと、ハンマーで叩いてシロアリや腐朽の具合を確認します。ほとんどの柱で根元が傷んでいます。30cm〜2mほどの根継ぎが10箇所ほど必要であることがわかりました。

床を受けている根太は2寸角としっかりしているのですが、それを受けている丸太大引の多くがシロアリでふわふわになっています。丸太はシロアリにとって美味しい白太部分が多いので、やられやすいとさの先生。ほぼ全部やりかえねばならないねと。

   物置の2階の調査

窓もなく真っ暗な物置の2階では、敷桁(地棟)の外部に突き出た部分から腐朽が進んでいるのが確かめられました。幸い、シロアリは入ってないようです。軒桁や棟木の高さを測り、断面図が描けるようにします。屋根の修繕の際に、できればトップライトをつけたいです。

 みんなで晩ご飯

寒いので、一度お茶休憩を取り、夕方まで実測調査。その後、上野市中心部のスーパーに買い物に行き、有名なレトロ銭湯の一乃湯さんに。とても味わいのよい銭湯でした。家に帰って、お鍋の晩ご飯。Tさんに用意していただいたお布団で寝させてもらいました。

  伊賀上野城がすぐ近所に

翌朝、散歩がてらすぐ近所のお城の周りを散歩しました。お城と並んで伊賀上野の名所である芭蕉の俳聖堂が家の前に見えています。お城の南には上野高校があり、明治の美しい木造校舎もあります。また春休みの折にゆっくり見学したいです。

  門の実測

門もシロアリ被害があちこちに。土塀とともに美しい風景の大事な要素なので、ちゃんと治したいです。

玄関周りの実測

母屋と物置の主な柱の倒れ具合を調査しています。全体に南に傾いているということがわかりました。

物置はシロアリ被害が大きかった柱を中心に5〜6cm沈下しているようです。その影響で屋根瓦が口を開き、雨漏りが見られています。早く修繕しないといけません。瓦は全体に北側でずれ下がりが顕著で、春休みには修繕の検討をしたいです。

 ミーティング風景

最後にお施主さんのTさんを交えて、今回の実測調査でわかったこと、お施主さんの希望などについて話し合いました。

今回の実測を元に平面図や断面図を作成し、修繕の計画、浄化槽の設置とWCの整備などを検討します。

Tさんは伊賀上野市がしてくれた耐震診断の結果があまりに悪いので、かなりショックを受けられたようですが、さの先生が、きちんと伝統構法の特性を評価してやれば、そんな心配することはありませんと説明。柱の足元や重すぎる2階の防音土壁など、いくらか心配な要素に対応して手を加えてやれば大丈夫ですと。

春休みにみんなで合宿しながら、主に物置の傷んだ部分を修繕しようという計画を具体的に工事予算も含めて検討することにしました。

Tさん、先生、お疲れさまでした。今後もよろしくお願いいたします。(リーダーのタニ)

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