奥出雲仁王門修復プロジェクト−8 可部屋櫻井家見学 4月21日/2024

21日朝、旅館の窓から見える横田の眺めがなかなかよい。
駅前のこの一帯は最近整備されたと見えるが、景観はよく配慮されている。太いしめ縄が掛かった歴史的建造物風の駅が見えたので、見学。
1934年の木次線開業当初の駅舎とあるから、90年になる。壁が校倉造風になっていて、玄関ポーチの柱の楚盤に鉄が使われているのは、この地のたたら製鉄の歴史文化から拾ったものだろう。
昨夜の集会が行われた本町会館の通りにある相愛教会が日曜ミサで開いていたので中を見学させてもらった。とくに祭壇が設られているわけではないが、入り口部の二階コアに対して東正面ではなく北になっているのは、当初入り口から正面にあった祭壇を戦時中に郵便局に使われ、そのままになっているとのこと。
解体部材をトラックに載せて、お昼ご飯は奥出雲の蕎麦ということで、名高い山県蕎麦に。ここの90歳という主人が昔撮った仁王像の写真が店内に飾られていた。
山県蕎麦を出て、仁田米の棚田を見にうろうろ。各所に魅力的な民家集落を散見する。多くは白漆喰に赤いきまち瓦。ところどころにトタンの茅葺きが混じる。蔵のある家が多く、ゆとりを感じる。
最後に一つ、重要文化財の可部屋櫻井家を見学。近在のたたら製鉄を仕切っていた相当に豪華な家だ。資料館には当時の製鉄業の資料が展示。
たたら製鉄と、そこで出来た銑鉄を精錬する施設がある。写真は精錬の窯。奥出雲一帯にはいくつものたたら製鉄の工場があり、櫻井家はその一つ。たたら製鉄は現在でも行われており、そこで産する玉鋼は日本刀などに用いられる。山口棟梁の話では、出来損ないの類が大工道具に使われるとか。
櫻井家の屋敷。立派な家である。
座敷の前の塀とその向こうの蔵などの景色が美しい。
  
松平不昧公が立ち寄る際に楽しめるようしつらえられたという庭もかなりのもの。
明治には田野村直入が逗留し、南画を残している。
奥出雲のいくつかの名所を訪れたが、ほかにまだまだある。温泉があり、たたら製鉄があり、蕎麦があり、棚田の米があり、花崗岩をくぐったいい水があり、したがっていい酒があり、雲州ソロバンもある。農家が今でも健全で、家の手入れがよく、野菜が美味しい。どこにもダレた埃っぽさがない。とても素晴らしい地域なのだ。にもかかわらず、どうして今まで知らなかったのか不思議なくらい。この仁王プロジェクトを契機に、奥出雲の人たちにその佳さを自分たちも認め、外に伝えていって欲しいと思う。
(さの)