近所の町家の格子を修繕する−1  1/15

さの:ゆうだい君、学校のご近所さんから格子が具合悪いので見て欲しいと相談があったよ。

ゆう:僕らでも直せるんすか?

さの:やれるさ。大丈夫、教えてあげるから。こたろう君も頼むよ。

こた:あ、はい。

ゆう:長屋っすね。間口は2間、格子は袖1尺5寸取られて4尺5寸幅ですね。

こた:家全体が北にちょっと倒れていて、格子が外れてます。これは糸屋格子?。

さの:そう。格子を外してみよう。框が傷んでいて、格子も下桟が腐っている。

ゆう:地板も外しました。あちこち腐ってる。

さの:玄関脇の植木鉢に毎日水をやった結果、腐ってしまったみたいだね。

こた:この1尺の框も交換ですか。

さの:そうしよう。松はないので、ヒノキで調達しよう。成は7寸、厚みは1寸5分、2mで両方が取れるね。

ゆう:柱の根元が傷んでいるみたい。

こた:根継ぎやってみたいです。

さの:十字目地継だ。やってもらおう。

ゆう:全体の倒れはどうするんですか?

さの:それは大仕事になるので、格子がはまるくらいに補正してみよう。

ゆう:なるほど、柱の内側が切り取られて格子が内側からしか外せないようになっている。

こた:袖の格子ははめ込みになっているけれども、入れ送りで外せるんだ。

さの:地板をはめると袖は外せなくなる。

こた:この家は内障子が生きていますね。

さの:そう、内は板戸て、戸袋で収める。戸袋がいいデザインなんだ。なかなか内の板戸が生きている家は少ないよ。

ゆう:これはそのまま生かしておくんすか?

さの:そうしたいところだけれども、この表の軸組に耐力壁が欲しい。戸袋は惜しいけれども、おそらく、あまり使っていないと思う。

こた:戸袋をいっぺん外して、土壁で耐震壁に作るということですか?

さの:そう。

ゆう:でも、こうして戸を外してしまうと、家の中から外がよく見えて面白いなあ。

こた:向かいの人たちからも家の中がよく見えているってこと?

さの:お祭りの日なんかには、こうして明け透けにして通りと一体になったりしたのかもしれないね。

ゆう:この地板に腰掛けて話し込んだりできたらいい街になるだろうなあ。

さの:そうだね。でも、京都人はそうしなかった。

ゆう:なぜすか?

さの:プライベートをしっかり守るということの大事さを知っているんだろうさ。

こた:その方が無理のない近所さんとの付き合いができるということですね。

さの:さて、格子とガラス障子を元に戻して、今日はおしまいにしよう。君たちは根継ぎの段取りを頼むね。

ゆう+こた:は〜い。

(ゆうだい、こたろう両君とも1年の木工ゼミ生です。つづきをお楽しみに。)

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