東京芸術大学建築科で教えておられた丸谷先生による伝統民家の温熱環境コントロールの知恵と工夫についてのセミナーが行われました。関西の丸谷ファン、学校の卒業生など20人弱が参加です。(先生は現在、東京で専門学校を立ち上げて指導をされておられます。)
この日はかつて明治〜大正期に群馬県などで盛んに行われていた養蚕、蚕種(蚕の卵の生産)業専門の建物が、蚕の成長に適した室内環境を維持するための家の様々な工夫と知恵が素晴らしいものであったことを解説してくださいました。
それは決して、現在高気密高断熱の室内でエアコンなどで行われている室温を中心とした室内環境コントロールのような大雑把なものではなく、もっときめ細やかなものであったと。小屋は床下の構造から、縁側による日射調整、板壁や土壁によるふく射熱利用、小屋裏から換気塔へと通気させる方法、二重に障子を合わせての調整などなど、様々な仕掛けが行われて、20〜28℃という蚕の生育条件に対応していた。
昔は自然の環境に従うしか無いわけで、その意味ではパッシブだけれども、室内環境を整える様々なアクティブな工夫を凝らしていた。とてもエコなのだと。ただ、温度を上げるために、炭を焚いて柔らかなふく射を利用するということ(アクティブ)はやっている。温湿度の調整に有効な土壁の特性をよくわかって使っているなど、今日よりもはるかに優れたエコハウスが達成されていた。
でも、それらの工夫は蚕のために用いられ、人間のためにはそれほどされていない。人間はお金を生まないし、多少の温度変化に順応できるからということのようだ。
ほぼ1時間だけの講演でしたが、密度のあるわかりやすい授業でした。丸谷先生、ありがとうございました。
(さの)