秋の見学旅行−5 浄土寺浄土堂  11月26日

見学旅行の最後は東大寺播磨別所浄土寺浄土堂。大仏様様式で知られる国宝の正方形の建築だ。

  

桐浴先生の解説のあと、みんなで中に入る。内部は写真撮影が禁じられているので、ネットに出ているものを借りる。

  

内部の写真が撮れないので、もっとも美しい内部については語るしかない。この南宋様式をもとにしたユニークなお堂はなんといっても、3*3に等間隔に立てられた構造と一体空間の見事さであり、それに尽きる。正面からじっと見ていると、中央に立つ阿弥陀と観音の3仏を囲む構造体だけの空間が見事に四天柱の外にまで広がって一体に3尊仏を包み込む様が感じられる。なんの装飾も要らないのだ。この感覚は写真では撮れないかもしれない。
通常は須弥壇を囲む四天柱がもっと緊密に構造的に結ばれるので、内陣と外陣という内外に空間が分たれる。浄土堂では驚くくらい、内陣の4柱を結ぶ材が少ない。それぞれに差し込まれた太い梁を3方に差し出した4本の柱はそのままあたかも大きな仏の腕のように外方に伸びて見えてくる。お堂の構造全体があたかも一つの大きな仏の身体となって見えてくる。この感覚は写真では表せない。
おそらく、このお堂を目の当たりにした人は多かれ少なかれ、この建築の奇跡に瞠目したに違いない。にもかかわらず、この特殊な建築を模倣した例を知らない。何故だろう?
 この寺の本堂を見れば、ほぼ同じような正方形で同じような大仏様の手法で建てられているのだが、残念ながらこちらには建築的感動はない。伝統的な和様のしつらえが随所に現れ、軒もわずかに反っている。建築的には浄土堂の革新はきちんと受け止められなかったのである。

 

このお堂ほどモダン建築を想わすものはない。この軒の高さというか、低さと力強さ、それを引き受ける太い柱と差し肘木組み物、そしてガンと張られた鼻隠しのなんと力強いことか。幾度見ても、この柱は仁王か不動に見えてしまう。原則そのままで一切の装飾を省く思い切りの良さ、美しさは、独特のものだ。

帰りのバスの中で、恒例の全員による感想発表。3つの中でいちばんのお気に入りは、若く大工志望の子が多い建築科の生徒たちが竹中大工道具館を挙げ、夜間生、伝統建築研究科生たちは箱木家と浄土堂を挙げた。わかりやすい結果のように思う。若い子たちにはもっと建築を勉強し感動を重ねて欲しい。

(さの)